何かをガマンしたり、無理しておこなうのがチャリティではない。「食べて、飲んで、楽しんで」それがチャリティになる『サンタバル』。今回は現役時代から車椅子寄贈活動を続ける赤星憲広さんを迎え、自然体でおこなえるチャリティのあり方や、社会貢献に興味があっても、一歩踏み出せない人への「きっかけづくり」などについて語り合った。

写真左から 梅田りさ(サンタバル実行委員長)/赤星憲広

子どものころからの想いや、
ファンとの約束がチャリティのきっかけに。

梅田

今回の対談は、私が「今年は阪神タイガースに優勝して欲しい!」って言ったのがはじまりで。タイガースが優勝したら大阪も元気になるでしょ。そんな話をしていたら、赤星さんが現役時代にシーズンの盗塁数と同じ数の車椅子を寄贈されていて、しかも現在も続けていると教えられて。ぜひお話を聞きたいと思ったんです。これはどうしてはじめられたんですか?

赤星

じつは小学生の頃、母が病気がちで姉が看護師をしていた病院に入院することが多くて。お見舞いにいくたびに、体調が悪いにもかかわらず点滴スタンドを持ちながら移動する姿を目にしたんです。それを見て「なんで車椅子を使わないの?」と聞くと、「車椅子は数が多くないのよ」と言われて驚いたんですよ。

それが車椅子との最初の出会いですね。

そこからJR東日本に就職して、車椅子の人が乗車する際に手助けすることもあって。そのとき車椅子の整備やバリアフリー化の充実について考えました。

それが、ふたつめのきっかけになると。

プロ野球選手になってからも「何かできることはないかな」と、1年目からずっと考えてて。とはいえ結果を出さないと活動できないので頑張りました。1年目で盗塁王取ったとき、ずっと心の片隅にあった車椅子が浮かんで、寄贈しようと。それも自分の武器である脚を活かして、盗塁の数だけ贈ろうと決めました。

小学生の頃からの想いが叶えられたんですね。

じつはもうひとつきっかけがあって。ルーキーのぼくを応援してくださる家族がいて。そちらの娘さんがぼくの2つ年下なんですが、2003年のシーズンを迎える前に骨肉腫になられて。病気のために足の切断が必要だけど躊躇していると相談されたんです。

それはすごく責任を感じますね。

ぼくも手術して欲しかったですし、優勝する姿を見せたかったので、彼女に会ってお話させてもらったんです。すると彼女も手術を受けると言ってくれました。その代わりに「あなた専用の車椅子をつくって贈るから」と約束して。つまり車椅子をつくるきっかけを彼女からもらったんですね。

ぼくたちがアクションをおこすための
「きっかけ」をいっぱいつくっていけばいい。

私は『サンタバル』というイベントを主催していて。これは『サンタ・ラン』が8年目ではじめて雨予報が出て、いつも1万人以上集まる参加者が半減したことからスタートさせました。天候に左右されることなく継続できるのが、本当のチャリティだと思うので。仲間のお店の人に「飲んで食べて、それがチャリティになるイベントをやりたい」と言ったら、賛同してくれて4年前からはじめたんです。あるとき聴覚障がいを持つ男性がうちの店に来られ、「サンタバルに感激しました。ろう者もぼくでもチャリティができて嬉しい」と筆談で伝えてくれて。事故で聴力や声も失ってから、知らない店にひとりで入るのを遠慮されていたとか。

聴覚障がいの方は外見では分かりづらいので、苦労されていますよね。

『サンタバル』なら、リストバンドをしてガイドブックを持ってお店に入ったら、何も言わなくてもメニューが出てくる。そのときの対応や店の雰囲気から「自分を受け入れてくれるお店だと思えて、第一歩を踏み出せる」とおっしゃって。しかも「開催してくれてありがとう」と、彼の友人が12月25日にクリスマスケーキを持ってきてくれたんです。「あなたのやってくれていることが、サンタです」って。

それはすごいですね~! いい話だ。

赤星さんの活動はずっと継続されていて、現役時代に贈った車椅子の数を超えたそうですね。

2009年までの現役時代には301台、トータルで700台後半の車椅子を寄贈しました。引退してからは「Ring of Red~赤星憲広の輪を広げる基金~」を立ち上げ、毎年12月に小野チャリティマラソンを開催してます。

私は飲食店経営をなりわいにしているので、『サンタバル』は無理なく自然にできることなんです。ふだんやっていることがチャリティになるので、軽い気持ちではじめられた。だから赤星さんのプロ野球選手として俊足を活かしたチャリティに、勝手にシンパシーを感じています。無理なくって大事ですよね。

ほんとそう。活動をはじめて18年目ですが、最初の頃は特別なことをしている感覚がどこかにあって。でもそれじゃダメなんです。ふつうになることが大切。たとえば買い物をして余ったお金を募金することが、日常の選択肢に組み込まれるようになるとか。

趣旨も知らずに「2500円のものが1000円で食べられる!」ってリストバンド買ってくれる人もいる。そんな風にお得感から参加して、あとからリストバンドに込められた想いを知るのもいい。飲んで食べて楽しんで、おつりとして「私が買った500円はおもちゃ代になった」と思ってもらえれば。赤星さんのマラソンも、みんな赤星さんと走りたくて来るわけでしょ。

そうです。きっかけは何でもいい。「安く食べられるから」でも全然OK。きっかけがないから、優しい想いを抱えていても、飛び込めないわけで。それならぼくたちが、アクションを起こすためのきっかけを、つくっていけばいい。そうやって自然に輪が広がるのが、チャリティのいちばんいい形かなと思います。